「パイライトディストピア」と「緑と青」

ガラス

みなさんこんにちは。

ビジュアル系ガラス作家の高木基栄です。

 

 

個展「境界線-緑と青-」も会期が今日を入れて残りあと5日となりました。

先日の投稿では作品画像を多めに載せて展示風景の紹介をしましたが、今回は作品と一緒に展示(掲示?)したテキストの紹介。

何が言いたくて今回の作品を作ったかを少しでも補足できたらと思います。

↓作品画像はこちらの投稿にアップしてます。

関連記事>>境界線-緑と青-展示作品紹介

<rebellionシリーズ>

間違ったルール・価値観の上に出来上がってしまった都市の様相。

2F中央の光る展示台の上の作品群はそんなものに対する怒りを表現したくて、というよりも突きつけたくて今回の展示のメインとして新作を制作しました。

作品名は一つ一つは同じ「rebellion」ですが、中央の作品群については
「pyrite dystopia(パイライトディストピア)」という裏タイトルをつけています。

 

pyrite=黄鉄鉱(おうてっこう)という鉱物の名前です。見た目が金に似ていて金に間違えられることが多いことから「愚者の黄金」とも呼ばれる鉱物で、今作では愚者の黄金の「黄金」は金沢、もしくは完璧とされている価値観のことを指した比喩表現です。

dystopia=ディストピアまたはデストピアは、ユートピア(理想郷)の正反対の社会である。一般的には、SFなどで空想的な未来として描かれる、否定的で反ユートピアの要素を持つ社会という着想で、その内容は政治的・社会的な様々な課題を背景としている場合が多い。

引用:wikipediaより

 

黄鉄鉱はボクも子供の頃初めて見たときは金だと思いました(金なんて見る機会もないからね。。。笑)

 

ボクは用途のあるものもないものも作ります。

なので今回の様に作品展示の機会があれば当然両方の作品を展示しますが、一般的な認識では食器など用途のあるものは「工芸」とされ、それ以外の用途のないものは「オブジェ」もしくは「現代アート」などと言った一言でひとくくりにされてしまいます。

「高木さんは両方やるんですね。」なんて言われることも多いですが、言った本人は「工芸」も「オブジェ」も「現代アート」という言葉もたいして意味はわかった上で使い分けてはいません。
大体のニュアンスで、工芸は「うつわ」オブジェと現代アートは一緒くたにして「その他」という意味で使います。

 

随分と前から文字や言葉の意味の価値はインフレを起こしていて、人はその言葉の持つ意味を深く考えることなく使う様になり、大事にもしなくなりました。

LINEのやりとりで「了解」を「り」の一文字で済ませてしまうという現状がいい例かもしれません。

深く考えることをしないので、工芸に関して言えば「工芸=用と美」という時代遅れの認識を未だに持っている。
スマホのOSはちゃんとアップデートするの、に頭の中はずーっとWindows95。それくらいギャップがすごくてアップデートもされていない。

そんな"自称”工芸大国の人たちが持つ曖昧で時代遅れな工芸に、ボクが常日頃考えている工芸観をぶつけたかった。それが今回の個展でボクが一番やりたかったことです。

<緑と青>

個展のサブタイトルにつけた「緑と青」は作品の色の事ではありません。

「緑と青」の緑は、高村光太郎の代表的な論文の<緑色の太陽>から拝借しました。
とてもざっくりと内容をかいつまんで言うと「画家は自分がそう見えるなら太陽を緑色に描いてもいいではないか」そんなカンジです。

学生時代から今まで、自分の思うがまま緑色の太陽を描き続け、自由の意味を履違え、自由をこじらせすぎた仲間や作品たちをたくさん見てきました。ボクもその一人でした。

 

あるきっかけで自由と好き放題する事は違う ということに気がつきました。

 

ボク達が扱う工芸素材には自由なんてものはなく、あるのはたくさんの制約です。
その制約に対して自分がどう向き合うのか。

その制約と闘うか・寄り添っていくのか。作家個人個人の素材に対しての向かい合い方がその作家ごとの工芸だとボクは思っています。

本当にこの先ずっと太陽は緑色のままでいいのか。どうせならボクは緑色の次の色を塗りたい。
今回の作品が本当に緑の次、青色にできていたかはボク自身まだ懐疑的です。
学校教育で身体に染み付いてしまった緑色(自由神話)がまだまだ抜けきっていないかもしれない。

でも緑色のあり方に疑問を持ち、緑ではなく青色でありたい。少なくとも今回の展示ではその間の過渡期を見せたい という思いから緑と青の境目、「境界線」という言葉を今回の個展のメインタイトルに持ってきました。

サブタイトルについて、本当なら緑と青 ではなくて、「光のその先」とか「cutting edge」なんていうタイトルを謳った方がもっと格好がつくのかもしれませんが、あまりに先のことすぎてボクにはリアリティがなかったので緑の次の色ということで青を選びました。
(光の色だと、赤外線側から見るのか紫外線側から見るので緑の次(隣)の色は変わってきますが、自動車免許証も緑の次は青 ということでなんだか次のステップっぽくていいかも と思ったので今回は緑と青と名付けました。)

 

最終日の25日でのギャラリートークではこのテキストをもう少し掘り下げたことをお話できたらなと思っています。

個展情報詳細

会場>atlier&gallery creava

<会期>2/10(土)〜25(日)

<時間>11:00〜17:00月曜定休

※最終日の25日は18:00〜ギャラリートーク&クロージングパーティーです。
お茶と軽くつまめるものを用意してお待ちしております◎

 

〒920−0865石川県金沢市長町2丁目6−51

コメント