苦手なことは後に回してしまう派です -箱書き編-

日々の制作

こんにちは。ビジュアル系ガラス作家の高木基栄です。

 

 

展示も一区切りし、次の締め切りまでまだ少し時間があるので次のことを考えながら一番苦手な作業に取り掛かってます。

 

数年前職場の上司に「イヤなことほど先にやれ」と教えられ、仕事ではできるだけイヤなことを先に済ますように心掛けてはいますが、どうにもこればっかりはなかなか気が進まない。。。

 

 

次の作業に進むための道の途中で立ちはだかる難敵、その名も 箱書き」

やらなくてはいけないことほど捗らない。。。

 

 

一人で黙々と作業するのは慣れっこですが、苦手なこととなると途端にその作業効率が落ちるので、ここはブログを通して<箱書き作業の工程をお伝えする>という名目で自分をダマしながら箱書きします。

 

箱書き手順紹介

桐箱を準備する

→ 箱屋さんは色々ネットでも出てくるので自分にあったところをチョイスしましょう。

※ちなみにボクは箱義桐箱店さんで購入してます。

お値段も手頃な上に、富山にも営業所があるので、郵送ではなく担当の方が直接持ってきてくれます。

送料がいらない上に相手の顔が見えるという安心感があって◎

 

 

箱書きをする面にヤスリをかける

→ 一番大事な工程。そのまま書き出すと墨が滲んで酷いことになります。箱書きする面に下処理をしましょう。

 

※ボクは#120→#400の紙ヤスリで表面を整えます。

ひょっとしたらもっと粗くてもいいのかもしれませんが個人的には#400くらいかけたほうが安心感があって◎

 

ちなみにヤスリをかけて出た木の粉は箱書きが終わるまでそのままです。

 

あくまでこれは個人的な体験談ですが、丁寧にヤスリがけして下処理をしても、粉をキレイに拭き取ってから箱書きすると滲みが大きいです。

それほど丁寧にヤスリがけしているわけではないですが、粉が残ったまま書いてしまった方が滲みは少ないです。(箱書きが終わった後、粉は吹いて落としてます。)

他にも目止めの方法としてはとの粉を刷り込むとか、チョークの粉を刷り込む乾いた布でこするという方法を聞いたことはありますが試したことはありません。

基本的にはどの方法も木の目地を埋めるのが目的だと思うので、他の素材が木の目地に入り込むくらいなら同じ木から出た粉の方がいいだろう という理由でヤスリがけをチョイスしました。

 

 

箱書き

→ いよいよ本番。一発勝負なのでミスしないように書く。

※失敗しても墨のしみ込む深さが浅ければ桐箱の表面を削ってしまえばやり直しはきくのですが、表面をキレイに削るのが大変&やっぱりノーミスの方がキレイに仕上がる ので極力ミスはしたくないですね。

事前に何回も紙の上で練習はしますが、いざ本番、箱に書くとなると質感も違えば、紙と違って厚みもあるのでなんとも練習通りにはいかないです(^^;)

 

箱書きはだいたい作品の名前と作者(自分)の名前を書きますが、止め・はね・はらいをしっかりカッチリと楷書で書き上げてもビシッと決まってかっこいいですし、達筆な人が行書なんかでサラサラっと書いたものもかっこいいです。

ボクは幼稚園〜中学3年まで書道を習ってましたが、今はとてもじゃありませんがしっかりとは書けないので、とめ・はね・はらいの基本はある程度頭に置きつつ、文字を絵のように書く(書道的にイイものを目指すのではなくて、見た目のプロポーション重視)ようにしています。

基本的に長細いプロポーションが好きなので文字も長細くなりがち(笑)

 

 

④落款を押す

→ 「らっかん」と読みます。

印鑑みたいなもの。印泥と呼ばれるもったりとした朱肉みたいなものをつけて名前の横に押します。

※印泥は種類にもよりますが印泥の赤(朱色)はめっちゃ鮮やかでキレイです。
ただ乾きが遅かったり、朱肉に比べて値段が高かったりと色々なので、個人的にはお手軽な朱肉を使ってます。
印泥についても別に赤じゃなければいけないという訳でもないと思うので、どうしてもという色があれば絵の具なんかを使って好みの色にするのもアリだと思います。

 

 

※落款もどんなものを使うかで個性が出せると思います。
学生の頃、授業で石を彫って作ったりもしましたが、今は中国に行った時に露天商のおじさんがその場で彫ってくれたものを使ってます。(その時の中国が初めての海外でめっちゃ印象に残ってる)
自分で作るもよし、ちゃんとしたところでお金を払って作ってもらうもよし。書の世界なんかだときっと色々きまりとかあるとは思いますが、個人的にはただきまりに則ったものを使うよりは気持ちの入るものを使った方が断然イイと思います◎

 

 

⑤上に和紙を乗っけて紐を結んで完成

→ この紐(真田紐)もいろいろな種類があるので好きな紐を選んでつけるのがイイと思います。
個人的に紫色が好きなので作品を包む布と真田紐、そして箱にかぶせる和紙は紫色のものを使ってます。(数年前に見てもらったオーラソーマで、誕生日の数字から導き出される色も混ぜたら紫色になるという、個人的に紫はなにかしら関心のある色でもあります)

余談ですが、めちゃくちゃ長いので有名な寄生虫のサナダムシはこの真田紐に似てるからその名前になったそうな。

 

※箱書きと直接関係はないですが、真田紐の端っこも切りっぱなしではなくちゃんと処理がいるんだよっていうのは昔教えてもらいました。

たしかに端っこを処理した方が見栄えもイイです◎

処理の仕方は横糸をぎゅーっと引っ張って2、3回巻いて結ぶだけ。

前に結び目が解けたことがあるので、ボクは結び目にちょっとだけ糊やボンドをつけて解けないようにしてます。

そのあとはみ出ている長い糸はカットします。

 

 

そもそも箱書きって?

箱書きを書くのが本当に苦手なので、誰が何のために箱書きなんてやりだしたんだ??

なんて考えたこともありますが、箱書きってその作品の作者が書けば作品の証明書ですよね。しかもパッケージ一体型の。

 

古くからある茶道具なんかだと「◯◯が所有していた」とか「◯◯で使用された」なんてことの証明にもなるので品質保証書兼そのもの自体が歴史の記録物だったり。

前に聞いた話だと昔は茶道の家元に箱書きをお願いして中身を保証してもらうことで作品の価値がグーンと上がったりするので中身よりも箱の方が大事だったり価値があったりしたそうな。

 

 

中身よりも付属品である箱の方が大事とかおかしくない??

 

 

なんてその時は思ったりもしましたが、よくよく考えたらビックリマンチョコも本来お菓子のはずなのにおまけのシール目当てで中身が捨てられることが社会問題になったり、チョコエッグもお菓子売り場で売られているものが、おまけのおもちゃだけ高額で売られていたりと似たようなフォーマットは今も昔もものを変えながら続いてるところを見ると日本人ってそういうのが好きなんだなぁ と思ったり。

 

ゲームソフトも箱や説明書があるだけで中古買取価格が上がったりしますしね。

 

 

とまあ苦手な箱書きをしていると他のことまで色々考えちゃいますが、一通りの箱書きの工程はこれでおしまいです。

 

もっと箱書きの数をこなせば苦手意識も克服できるのでしょうが、それはまたおいおい。。。

色々決まりごとがあると思いますが、それらを守ること以上に箱書きも作品の一部と思って最後まで手を抜かずに丁寧にやることが大事ですね(^^)

 

おしまいっ

 

 

 

【H.29.9.22追記】

ブログを読んで下さった方に教えて頂きました!

開明 木簡墨 という墨を使うと下処理をしなくても滲みにくく文字を書けるそうです。

 

と、いうことは<下処理+開明 木簡墨> でさらに滲みの少ない(上手く行けば滲みゼロ!?)文字が書けそうなので次の箱書きはこれを試してみたいと思います(^^)

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