今の自分ができることとして

みなさんこんにちは。
ビジュアル系ガラス作家の高木基栄です。

 

 

先月の台風と北海道胆振東部地震と立て続けに大きな自然災害があり、何かできないものかと考えながらも、改めて何もできない無力さに悶々としながらも、でも何かしたいという気持ちの中でいろいろと考えた結果、ちょっとだけですが自分でもできそうなことが見つかった気がしたのでやってみることにしました。

 

今回の試み

普段作品を常設で取り扱っていただいている、atelier&gallery creavaさんに協力していただき、今月からしばらくの間、ボクの作品については価格を2つつけさせていただくことにしました。

 

 

一つは今まで通りの価格、もう一つは500円増しの価格。

お客さんが価格を選べる仕様です。

 

 

500円増しの価格で作品を買っていただけた場合、差額の500円を今回の災害の被災地への義援金として送りたいと思います。

今回の試みでの常設展示をするにあたって、作品の横にメッセージボードを置いていただき、そこに今回の件に関してのボクの思いを書き連ねています。

以下、そメッセージボードの文章です↓

【誰も我慢することなく続けられる支援を】

9月4日の台風21号、9月6日の北海道胆振東部地震についてSNSやネットのニュースで被害状況を知り、今の自分に何かできることはないかをしばらく考えていました。

 

ボクの記憶に鮮明に残っている自然災害が2つあります。
阪神淡路大震災と東日本大震災です。
阪神淡路大震災の時は小学生。東日本大震災の時は卯辰山の研修者でした。

 

この2つの震災が特に印象に残っている理由は、『ものすごく我慢させられた記憶があるから』です。

 

阪神淡路大震災の時は、小学校でも募金を集め被災地に送っていたのですが、当時ボクは母親にその月のお小遣いを募金するように言われました。
おそらく当時は、毎月の限られたお小遣いの中で何のプラモデルを買うか程度のことをとても楽しみにしていたと思うのですが、当時のボクにはそんな些細なことがとても大事なことでした。

祖父も被災しており、今思えば母が募金しなさいと言ったのは全然納得のいく事だったのですが、高速道路が根元からひっくり返っている映像よりもハッキリと、我慢を強いられた記憶の方が強く残っています。

 

もう一つは東日本大震災。
3月ということもあり、年度末に卯辰山工芸工房を修了する先輩達を送り出すためのお別れ会の中でやる余興の準備に忙しい時期で、その会を取り仕切る担当をしていたので、
事前にメンバー間での打ち合わせも重ね、当日を楽しむ気満々で準備を進めていた際に起きた震災で、「お別れ会をやるのは構わないが余興をしたりして盛り上がるのは不謹慎ではないか」
という謎の雰囲気に包まれ、テレビでもCMを出している企業が軒並み自粛し、ACの「ぽぽぽーん」というCMばかりが流れていました。

 

この流れもあってか、お別れ会は行われたものの余興は取りやめ。
と、ここまでは別に良いのですが、一番悔しかったのが、余興をやるかやらないかを相談していた時は、「こんな雰囲気じゃ楽しめないから余興はやめにしよう」と神妙な顔をしながら口を揃えて言っていた人たちが
当日のお別れ会で誰よりもバカ騒ぎをしていたこと。余興を自粛するというポーズだけは取って、馬鹿正直にその自粛ムードに乗っかってしまった自分含め余興はやってもいいんじゃないかという少数派だけが本気で我慢していました。

この2つの我慢に共通するのが「今、被災地の人たちは大変なんだから、自分たちも楽しむことを我慢しよう」という変なロジック。
もちろん被災した方々のことを忘れてどんちゃん騒ぎしてもいい と言いたいわけではありません。

ただ、我慢するということにどれだけの意味や効果があるのかを問いたい。
この理由がハッキリすれば、当時納得の出来ない我慢して悔しかった思いをした過去の自分も成仏できるような気がします。

 

ボクが言いたいのは我慢するフリをするくらいなら、自分はいつも通りの生活を楽しんで、楽しめることに感謝し、自分が楽しんだ分何かを支援として還元できれば無理なく回るんじゃないか、そして単発ではなく支援をし続け、忘れないことが大事なんじゃないかな ということです。

 

東日本大震災のあったときには、なにかやれることを!ということでチャリティーの展示があり、そこでの売り上げは全て(または原価以外を全て)義援金に回す というものがいくつもあり、
そのうちのいくつかに出品したりもしましたが、それだと作品を作れば作るほど、売れれば売れるほど義援金としてはお金を回せるけれど、ボク個人としてはどんどん首が絞まっていく仕組みのものでした。

 

この仕組みでは作家が潰れたら被災地への支援も打ち切りになってしまうので長く続けることはできません。
事実、どの展示も今現在まで続いているものはありません。人間一時の我慢は出来ても、生涯我慢し続けるということはなかなかできることではありません。

 

今回の台風21号及び、北海道胆振東部地震で被災した方たちを支援をするのであれば、作家も潰れることなく、支援も一回きりではなく続けられるものがいい。
そう思って、今回creavaさんにお願いし、作品の値段を2つつけさせて頂きました。
① 今まで通りの作品の価格。
② ①の価格より500円高いもの。

①については今まで通り。②については差額の500円をそのまま義援金に充てるという仕組みになっています。
これだとギャラリー側、作家側双方我慢することなく、賛同してくれる方のみの義援金を被災地支援に送ることができると思いこの形をとらせていただくことにしました。

②のみにしなかった理由は、【義援金は強制のものではない】というのが一番の理由です。

これが「誰も我慢することなく、できる範囲で最大限の支援ができないか」という問いに対しての現時点でのボクの出せた答えです。

 

以上がメッセージボードの内容になります。

親切はいつかバテる

売り上げの何%は寄付しよう とか、◯◯円寄付しよう というのは本当にいいことなんだと思います。

ただ自分の身を削ってする親切は自分の体力までしかできないので必ずいつかバテます。
バテることなくずっと義援金を送り続けるにはどうしたらいいかということを第一に今回の試みを考えました。

 

creavaのスタッフさん達からしたら、作品の価格を2つつけて事務処理することなんて面倒以外の何物でもないのに、快くボクのワガママに付き合って頂いて本当に感謝しているので、この恩は何倍かにしてお返しできるよう精一杯頑張ります。

 

もし、この方法、ココが欠陥でこうした方がより良くない?というところがあったらぜひ御指南ください。

今同じ方法で同じものでも価格が2つあるネットショップの準備も慣れないながらに進めております。

 

そして集まった義援金はどう送るのがベストなのか。それをこれから勉強していきたいと思います。

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