グルーチップガラスの制作行程紹介

ガラス

みなさんこんにちは。
ビジュアル系ガラス作家の高木基栄です。

 

今回はグルーチップという技法を使った作品と作品の作り方の紹介です。

グルーチップガラス

この作品の表面はなんだか割れているような表情をしていますよね?

アップにするとこんなカンジ。


モノによってはシダ植物の葉っぱのようにも見えます。この独特の表情をしたガラスがグルーチップガラスと呼ばれるものです。

 

このグルーチップという技法は、ガラスの表面をまずはサンドブラストという、砂(研磨材)を高圧で吹きつける機械を使ってガラスを磨りガラスにし、その磨りガラスなったところにニカワを塗って、そのニカワが剥がれるときに一緒にガラスの表面を剥がして独特の表情を作るという、古い窓ガラスの装飾に使われていた技法で、ガラスの剥がれ方はニカワに任せるしかなく、毎回違った割れ方をするので同じ表情のものは一つもない、それぞれが一点ものになります。

 

展覧会の際によくこのグルーチップを使った作品の制作方法ついて質問を受けることが多いので、今回はこのグルーチップガラスの制作工程の紹介です。

制作工程紹介

ガラスを磨りガラスにする

まずはグラス(お皿)等、グルーチップの表情にしたい箇所にサンドブラストをかけて磨りガラスにします。

ここで磨りガラスにする理由は、ガラスそのままの上にニカワを塗ると表面がツルツルすぎてガラスの表面を割らずにニカワが剥がれてしまうため、ニカワの食いつきをよくするためにわざと表面を荒らして磨りガラスにしておきます。

湯せんして溶かしたニカワをガラスに塗る

ニカワは直火にかけるとすぐ焦げてしまったり、沸騰してしまって上手く剥がれてくれなくなってしまうので、湯せんで溶かしていきます。

 

ニカワは画材屋さんやネットで簡単に買うことができます。
ニカワを探すと棒状のものや液体のものも見つかると思いますが、基本的には細かい粒状のもの(粒膠と呼ばれるもの)がオススメです
棒状のものでも問題なくグルーチップは出来るのですが、塊として大きいので溶かすのに時間がかかります。
液体のものは日本画用で、グルーチップに使うには濃度が薄いので液体のものは使えません。

 

湯せんでニカワが溶けたら磨りガラスにした部分にニカワを塗っていきます。
全体的に同じ厚みになるように2回ほど。あまりニカワが薄すぎるとガラスを割ってくれないし、厚過ぎてもニカワが引っ張る力が強過ぎてガラスが割れてしまったり、ニカワが弾けてくれなかったりすることがあるので程よい厚みを心がけます。

ニカワが塗り終わったらしっかり乾燥させてニカワの中の水分を完全に抜き切ります。
急いで乾かすときは一晩扇風機の前に置いておくと水分が早く抜けるのでおすすめです(^^)

 

乾燥したかどうかの判断は、ニカワを塗ったところを爪でグッと押してみて、カチカチになっていたら乾燥できています。
乾燥が甘い場合は硬めのグミを押したような感触で、爪の跡が付くはずなのでその時はまだ乾燥が必要です。

電気炉で温める

ニカワがしっかりと乾いたら電気炉に入れて90℃で数時間加熱すると、ニカワが乾燥・縮んで、魚の鱗のように細かくバリバリに割れていきます。

バリバリに割れたニカワは手で簡単に剥がれるので、キレイに剥がしてあげれば作品の完成です。

 

この時ニカワが完全に乾燥していないと、ニカワに残った水分と電気炉による加熱で再び溶け出してただただニカワが下に流れていくことがあります。(何度乾燥具合がわからずに失敗したことか・・・涙)

 

中にはニカワの中の引っ張る力が強すぎて割れてしまうグラスも出てきます。。。
最近ではこういう失敗はなくなりましたが、慣れないうちはよく失敗しました(^^;;)

 

こんなカンジで制作しているグルーチップガラスなのですが、ニカワの塗り方やニカワを塗った時の厚みの違いで模様が細かく出たり大きく割れたりと毎回違った表情が見れて楽しいです。
言い方を変えれば模様の出方はまだまだコントロールできないので、引き続き色々検証していってみたいと思います。

 

今回紹介したグルーチップを使った作品はネットショップにて取り扱いしております。
こちらもチェックしていただけたら嬉しいです(^^)

 

コメント