みなさんこんにちは。
ビジュアル系ガラス作家の高木基栄です。
コロナ禍
禍(か) はじめて見た漢字である。
世界中が大変な事になっていて、前例のない事を皆目の当たりにしてどうしたらいいのか全くわからない。
ボクは先週あたりまでは連日ぼんやりと考え事をするだけで、心ここに在らず。制作のペースはめちゃくちゃスローになってしまっていた。
普段はこれといって何も考えずに楽しんでいるだけなのに、大変な時になると「何か自分にも出来ることはないだろうか」などとムダに使命感のようなものを滲ませてしまって自分の無力さに嘆くというボクの悪いクセである。
そう。ガラスをちょっと吹くことができる ということ以外これといって取り柄のないボクがこういった時に何かできるわけがないのである。
そこにきて「不要不急」という初めて見る四字熟語に思いっきり正面衝突してしまった。
ボクは日本語の白と黒だけでなくいろんな段階のグレーのグラデーションがある、含みの多いところが結構好きなのだけれど、今回ばかりは日本語の含みの多さを恨んだ。
不要不急
不要不急:重要でもなく急ぎでもないこと というような意味だ。
まさにボクが普段やっている制作なんかはこれに当てはまると思う。
もちろん、ボクにとっては不要不急どころか必要不可欠。
ボクは常々、制作は呼吸のようなものだと思っているのでボクが生きる上でも、ご飯を食べるという意味でも二重の意味で必要不可欠なのだ。
ところがボクが日頃やっているようなことは世間一般では不要不急に当てはまる。このギャップにとても苦しめられた。
じゃあどうしたらいいのか という答えの無い問いにも考えを巡らせてみたものの、これといってスッキリしない。
ここにきて、本当はボクは何か役に立てる事がしたいというのではなく、何かしらの理由をもって許されたい というか正当化されたいだけなんだ という事に気づきもしたが、それすらも解決できない日が何日も続いて、まぁモヤモヤした日々を過ごしたのである。
救い
そんなモヤモヤもある日、情報収拾のために見ていたtwitterの中の2つのツイートに救われた。
ひとつはダウンタウンの松本人志さんのツイート。
今日も自宅に居て何もしなかったなー。
いえいえ。今日も自宅に居てコロナを阻止しましたよ。頑張りましょう。
頑張りましょう。なんで2回言うねん。
なんで3回言えへんねん。— 松本人志 (@matsu_bouzu) 2020年4月20日
ふたつめは菅野有希子さんのツイート。
うつわって不要不急なんですけど、不要不急が生活を豊かにしてくれること。最近みんな薄々気づいてるのでは…。1日に3回もきちゃうごはんの時間。別にお皿なんてなんでもいいんだけど、ちょっといいうつわがあると和みます。うつわはセルフケア。うつわはご自愛。#きほんのうつわ pic.twitter.com/IRfJLfTjxN
— 菅野 有希子 | stylist (@yukiko130) 2020年4月10日
家でモヤモヤしながら考え事をしていた間もボクはコロナが広がるのを阻止できていたし、不要不急なのでは と思いながら作っていた器たちはセルフケアの為の道具、ご自愛のためのもの。いやそういうものに「してもらえた」のだ。
頼まれもしないのにいつの間にか一人、勝手に背負い込んでいた「重くネバネバとした中々振り切れない何か」はこれで断ち切れた。
ここから何をどうするかはまだ決まってないけど、気持ちが軽くなった分スローになっていた制作の遅れもなんだか取り戻せそうな気がしてます。
新しい作品のタイトル、やってみたい技法。家であ〜でもない、こ〜でもないと考えていた事が急に色々繋がってまた何か作れそうです。
上手くいくかどうかはわからないけど、とりあえず精一杯やってみながらも、この状況下で出来るだけ多くの文字を残していきたいと思います。
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